重度の原発性腋窩多汗症に対するボツリヌス療法(保険適用)について
日本人の約6%はワキの多汗症で悩んでいます
- 特別な原因がなく、日常生活に支障をきたすほどのワキの多汗がみられる病気を「原発性腋窩多汗症(げんぱつせいえきかたかんしょう)」といいます。
- ワキ多汗は、社会的活動の盛んな若年・中年世代に多くみられる悩みです。
- 日本で実施された調査で、日本人の原発性腋窩多汗症の有病率は5.8%と推定されています。
- ワキの多汗は、気候や運動による温熱刺激と、緊張やストレスなどによる精神的な刺激の両方が原因となって生じます。
ワキ汗が気になって日常生活で困っていませんか?
- 重度の腋窩多汗症は、日常生活に支障をきたします。
- 下記のようなことで悩んだことはありませんか?
ワキの多汗症は以下の基準により診断されます
以下にあてはまる場合、原発性腋窩多汗症と診断され、治療の対象になります。※
- 原因不明の過剰なワキ汗が半年以上前から続いている
- さらに、以下の6項目のうち2項目以上に当てはまる
両ワキで同じくらい汗をかく | |
ワキの汗が多いため、日常生活に支障が生じている | |
週に1回以上、ワキに多くの汗をかくことがある | |
このような症状は25歳より以前にはじまった | |
同じような症状の家族・親戚がいる | |
眠っているときはワキの汗がひどくない |
※原発性局所多汗症診療ガイドライン策定医院会.日皮会誌2010;120:1607-1625 ©財団法人日本皮膚科学会
日常生活に支障を頻繁に感じる場合は重度の多汗症と診断されます
多汗症の重症度は、以下の3または4に該当する場合に重症(重度)と診断されます。※
- 日常生活に支障はない
- 我慢はできるものの、ときどき日常生活に支障を感じる
- 我慢しがたく、しばしば日常生活に支障を感じる
- 我慢できず、いつも日常生活に支障を感じる
汗の量の多い少ないではなく、どれくらい生活に支障があるかによって診断されます。
※原発性局所多汗症診療ガイドライン策定医院会.日皮会誌2010;120:1607-1625 ©財団法人日本皮膚科学会
ボツリヌス療法は、ワキの下に薬を注射して、発汗を抑える治療法です
- ボツリヌス療法とは、ボツリヌス菌がつくる天然のたんぱく質から精製された薬をワキの下に直接注射する治療法です。
- この薬が交感神経から汗腺への刺激の伝達をブロックし、発汗を抑えます。
ボツリヌス療法の効果は通常4~9か月間持続します
効果
通常、治療後2~3日であらわれ、4~9か月にわたって持続します。効果がなくなれば元の状態に戻るので、また同じように治療を行います。効果の程度や持続期間には個人差があります。
完治をめざす治療法ではありません。
副作用の多くは一時的なものです 気になるときは医師にご相談を
副作用
注射後、まれに次のような副作用は生じることがありますが、多くは一時的なものです。
程度が強い場合など、気になるときには医師に相談してください。
- 注射部位が赤くなった、はれた、痛む
- からだがだるい
- ワキ以外の部位で汗が増えた
重度のワキの多汗症は健康保険で治療することができます
対象となる多汗症
ボツリヌス療法を受けられるのは、「重度の原発性腋窩多汗症」です。症状によっては、ボツリヌス療法を受けられない場合があります。
費用について
保険診療での使用が認可されている製品を用いた場合、3割負担による薬剤費は約28,000円です。これに初診料や予約量などが加算されます。
多汗症の治療に使用されている全てのボツリヌス注射が保険適用されるわけではありません
厚生労働省が重度の原発性腋窩多汗症治療での使用を認めた薬でない場合
- 保険が適用されないことがあります
- 万が一健康被害が起こった場合に公的救済制度の適用にならないことがあります
上記リスクを十分考慮し、健康保険での治療を望まれる場合には、その旨を医師にお知らせください。
このような方はボツリヌス療法を受けられません
- 全身性の筋力低下を起こす病気(重症筋無力症、ランバート・イートン症候群、筋委縮性側索硬化症など)がある方
- 妊娠中あるいは授乳中の方、妊娠している可能性のある方
- この治療により、発疹などのアレルギーを生じることがわかっている方
このような方は、ボツリヌス療法を受ける前に申し出てください
- ボツリヌス療法を受けた経験がある方
そのとき治療した病気の名前、治療時期、使用した薬の量を医師にお伝えください。 - 現在、何らかの薬を使用している方(市販薬を含む)
一部の抗生物質や筋弛緩薬、精神安定剤など、ボツリヌス療法と同時に使用する場合は注意を要する薬があります。 - 慢性的な呼吸器の病気(喘息など)がある方
治療後は次のことに注意する必要があります
- 治療当日のみ、激しい運動は控えてください。翌日以降は、日常生活上の制限はありません。
- 注射した部位は、揉まないようにしてください。
- 女性は治療後2回の月経が終わるまで、男性は治療3か月が経過するまで、避妊をしてください。
- ほかの医療機関や診療科でボツリヌス療法を受ける際には、ワキの多汗症に対してボツリヌス療法を受けたことを医師にお伝えください。